厚生労働省│事業主への支援、助成金等一覧
1.労働時間・年次有給休暇・賃金・安全と健康確保対策
労働時間・年次有給休暇や賃金、労働者の安全と健康確保対策については、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法で労働条件の最低基準が定められており、これを遵守しなければなりません。法的責任は事業主が果たす必要がありますが、さらなる労働条件の向上に取り組む企業等に対して、以下のような支援を行っています。
なお、労働基準関係法令についてご不明な点がございましたら、所轄の労働基準監督署(全国321カ所に設置)へお気軽にお尋ねください。
労働時間や年次有給休暇については、政労使をメンバーとする「官民トップ会議」において策定された「仕事と生活の調和推進(ワーク・ライフ・バランス) 憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を踏まえ、仕事と生活の調和の実現に向けた社会的気運の醸成や長時間労働の抑制など、社会全体で働き 方の改革を進めています。
労働基準法においては、労働時間は1日8時間・週40時間までを原則とし、それを超えて労働させる場合には、事業主 は、労使協定を行政官庁へ届け出るほか、割増賃金を支払うこと等が規定されています。また、事業主は、労働者の勤続年数等に応じた年次有給休暇を与えなけ ればなりません。
これら法定基準を遵守することはもちろんですが、厚生労働省では、事業主等が、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等に取り組むに当たって参 考とすべき事項を定めた「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)の周知・啓発を図っているほか、以下の通り、中小企業を積極的に支援しています。
[1] 時間外労働等改善助成金
中小企業・小規模事業者が時間外労働の上限規制等に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む事業主に対して助成するものであり、中小企業における労働時間の設定の改善の促進を目的としています。
賃金については、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定めることとされており、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。また、労働基準法に おいて、1日8時間を超えて、または週40時間を超えて労働した場合、休日及び深夜に労働した場合には、それぞれ通常の賃金額の25%(休日は35%)以 上の率で計算した割増賃金を支払うことが規定されています。なお、平成22年4月1日に施行された改正労働基準法では、1ヶ月60時間を超える時間外労働 に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられました。ただし、中小企業については、この改正内容の適用は当分の間猶予されています。仮にこれらの基準よ り低い賃金額や割増賃金率を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額や法定割増賃金率と同じ定めをしたものとみなされます。
また、賃金の支払の確保等に関する法律では、退職手当制度を設けている事業主は、一部の場合を除き、退職手当の支払に充てるべき額のうち一定の額について保全措置を講ずるよう努めなければならないとされています。
厚生労働省では、事業主に対しては、退職金の支払や賃金制度の構築について、また労働者に対しては、企業倒産による未払賃金の立替払について、以下の通り、支援等を行っています。
[1] 中小企業退職金共済制度
[2] 賃金制度
都道府県労働局では中小企業に対し、賃金制度関連情報の提供や必要な指導・援助を行っています。
<お問い合わせ先> 都道府県労働局労働基準部
(3) 労働者の安全と健康確保対策(労働災害防止対策)
労働者の安全と健康の確保については、労働安全衛生法により、事業者が実施しなければならない措置(例:健康診断の実施、機械・設備の安全対策、化学物質を使用する際の換気装置の設置)が規定されています。
厚生労働省では、平成23年度においては以下のような各種助成制度等により、事業者の行う労働災害防止の基盤と環境を整備する努力を側面から支援しています。
[1] 産業保健総合支援センター
小規模事業場に対して、健康相談の実施、事業場への個別訪問指導等の産業保健サービスの提供を行います。
≪問い合わせ先≫安全衛生部労働衛生課 Tel:03-3502-6755(直通)
[2] メンタルヘルス対策支援センター事業
全国47都道府県にメンタルヘルス対策支援センターを設置し、メンタルヘルスに関する総合的な相談対応、個別事業場に対し、専門家によるメンタルヘルス対策の導入や拡充に関する訪問支援を実施しています。その他、管理監督者に対して、メンタルヘルス対策に関する研修を実施しています。
≪問い合わせ先≫安全衛生部労働衛生課 Tel:03-3502-6755(直通)
[3] メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
厚生労働省ホームページに、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(https://kokoro.mhlw.go.jp/)を設置し、事業者、産業保健スタッフ、労働者やその家族に対してメンタルヘルスに関する様々な情報を提供しています。
≪問い合わせ先≫安全衛生部労働衛生課 Tel:03-3502-6755(直通)
(4) その他
[1] 新規起業事業場就業環境整備事業
労働時間制度等の整備及び労働時間管理の適正化を図り長時間労働を抑制するとともに、安全衛生体制の確立や労働者の健康確保が図られるよう、労務管理や安全衛生管理に係る基本的な知識や理解が不足している新規起業事業場や、成長分野への進出・業態変更を行う企業等に対し、基本的な労務管理や安全衛生管理の要点についてのセミナーを実施するとともに、労働時間制度や安全衛生体制に係る管理・諸手続についての専門家を派遣し、支援及び助言を行っています。
この制度は、政府が管掌しており、業務上の事由又は通勤による労働者の傷病等に対し、必要な保険給付を行う等するものです。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。
また、一定の中小事業主及びその家族従事者等については、特別加入制度が設けられています。
[1] 労災保険の特別加入制度
〔1〕特別加入制度とは
労災保険は本来、労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外の方のうち、その業務の実態、災害の発生状況などから みて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方に対して特別に任意加入を認めているのが、特別加入制度です。
〔2〕中小事業主とは
加入対象となる中小事業主は、業種及び労働者数により定められており、金融業、保険業、不動産業、小売業においては労働者数50人以下、卸売業、サービ ス業においては労働者数100人以下、それ以外の業種においては労働者数300人以下の規模の中小事業主が対象となります。
〔3〕給付の種類
特別加入者が業務災害又は通勤災害により被災した場合には、療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付、傷病(補償)年金、遺族(補償)給付、葬祭料(葬祭給付)、介護(補償)給付が支給されます。
〔4〕加入手続
中小事業主に該当する方が特別加入を希望する場合には、労働保険事務組合を通じて所轄の労働基準監督署長を経由し、都道府県労働局長に「特別加入申請書(中小事業主等)」を提出します。
〔5〕お問い合わせ先
特別加入制度の詳細については、最寄りの労働基準監督署へお問い合わせください。
3.勤労者福祉対策
[1] 勤労者財産形成促進制度
この制度は、勤労者財産形成促進法に基づき、勤労者が退職後の生活の安定、住宅の取得、その他の資産形成を目的として貯蓄を行い、事業主及び国がそれを援助する(事業主:給与天引きの実施、給付金等による貯蓄援助、国:貯蓄の非課税)制度です。
(ア) 財形貯蓄制度
- 使途を限定しない一般財形貯蓄(利子等課税)
- 60歳以降の年金支払を目的とする財形年金貯蓄
- 住宅の取得、増改築等を目的とする財形住宅貯蓄
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄を併せて元利550万円(生保等の扱う財形年金貯蓄については払込みベースで385万円)まで利子等非課税となっています。
(イ) 事務代行制度
中小企業の事業主が、貯形貯蓄に係る事務を、構成員となっている法人である事業主団体(事務代行団体)に委託することができます。
(ウ) 財形給付金・基金制度
財形貯蓄を行っている勤労者のために、事業主が金銭を拠出(基金制度については、基金経由)し、一定期間運用後に勤労者にその元利合計である財形(基金)給付金を支払うものです。
(エ) 財形持家融資制度
自ら住宅を建設、購入、改良しようとする勤労者に対し、独立行政法人雇用・能力開発機構等が必要な資金の貸付け(財形貯蓄残高の10倍に相当する額(4,000万円を限度)の範囲内)を行っています。
(オ) 財形教育融資制度
勤労者本人又はその親族の教育を受けるために必要な資金について、独立行政法人雇用・能力開発機構が、必要な資金の貸付け(財形貯蓄残高の5倍に相当する額(450万円を限度)の範囲内)を行っています。
≪問い合わせ先≫ 勤労者生活課 Tel:03-3502-1589(直通)
[2] 中小企業退職金共済制度
この制度は、中小企業で働く従業員の福祉の増進と中小企業の振興に寄与することを目的として、独力では退職金制度を設けることが困難な中小企業者(常用 労働者数300人〈卸売・サービス業は100人、小売業は50人〉以下又は資本金等が3億円〈卸売業は1億円、サービス・小売業は5,000万円〉以下の 事業主)について、事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって設けられているもので、その概要は次のとおりです。
(ア) 一般の中小企業退職金共済制度
主に常用労働者を対象として中小企業者が独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)と従業員ごとに退職金共済契約を結び、各人について 毎月一定額(5,000円〈短時間労働被共済者は2,000円〉から3万円までの間で所定額を選択できます)の掛金を納付することにより、従業員が退職し た場合に、所定の金額(掛金月額と掛金納付月数に応じた金額)の退職金が、機構から直接その従業員に対し支払われるものです。
(イ) 特定業種退職金共済制度
厚生労働大臣が指定する業種(現在は、建設業、清酒製造業及び林業が指定されています)の中小企業者が期間を定めて雇用する労働者(期間雇用者)を対象 として、機構と特定業種退職金共済契約を結び、その期間雇用者の退職金共済手帳に、雇用日数に応じて所定の日額(建設業は310円、清酒製造業は300 円、林業は460円)の共済証紙を貼付することによって掛金を納付することにより、その期間雇用者がその業界から退職した場合等に、所定の金額(掛金日額 と掛金納付月数に応じた金額)の退職金が、機構から直接その労働者に対し支払われるものです。
(ウ) その他
掛金については、全額事業主の損金又は必要経費とされ、また、退職金を一時金で受け取る場合には退職所得控除が認められるなど、税法上の優遇措置が講じられているほか、掛金助成制度(一般の中小企業退職金共済制度については、新規加入の場合は原則として掛金月額の2分の1を1年間助成、掛金月額引上げの場合は原則として引上げ額の3分の1を1年間助成。特定業種退職金共済制度については、新規加入の場合に原則として1年間の3分の1を助成。)がありま す。
≪問い合わせ先≫ 独立行政法人勤労者退職金共済機構